iPhone 16シリーズは、9月9日の「Glowtime」イベントで発表される見込みである。しかし、このモデルはアップル史上最も賛否両論を巻き起こすスマートフォンになる可能性が高い。理由は、販売地域によって異なる体験が提供される点にある。

欧州と北米では、異なる規制に基づいて全く別のiPhoneが登場する見込みだ。欧州では、より自由なカスタマイズが可能になる一方で、最新のAI機能が制限されるという複雑な状況が生まれている。

異なる体験を提供するiPhone 16の二極化

iPhone 16シリーズは、これまでのアップル製品とは一線を画す存在となる見込みである。特に注目すべきは、同一シリーズ内で異なる体験が提供される点である。これは、販売地域ごとに異なる仕様が採用されることによる。従来のアップル製品は、世界中で同一の体験を提供することが特徴であったが、iPhone 16ではその前提が崩れる。具体的には、欧州と北米の市場で異なるバージョンのiPhone 16が登場し、それぞれが独自の機能と制約を持つことになる。

欧州市場向けのiPhone 16は、ユーザーに大幅なカスタマイズの自由を提供する。一方、北米市場向けのモデルは、アップルのエコシステムにより厳しくロックダウンされた形で登場する可能性が高い。この二極化は、アップルが地域ごとの規制や消費者ニーズに応じた製品戦略を採用した結果である。しかし、この戦略はユーザーにとって、どちらのバージョンが真の「アップル体験」を提供するのかという疑問を投げかけることになる。

EU新法がもたらす自由と制約

iPhone 16シリーズが地域ごとに異なる仕様で提供される背景には、欧州連合(EU)が制定したデジタル市場法(DMA)の存在がある。この新法は、いわゆる「ゲートキーパー」とされる大手テクノロジー企業に対し、顧客を特定のハードウェアやソフトウェアに縛り付けることを禁止するものである。この法律により、アップルは従来の「囲い込み」戦略を見直さざるを得なくなった。

その結果、欧州向けのiPhone 16では、ユーザーがプリインストールされたブラウザやメールアプリを削除し、サードパーティのアプリを自由にインストールできる機能が導入される。また、サードパーティのアプリストアを利用できるようになるため、これまでiPhoneで使用できなかったアプリやサービスも再び利用可能となる。しかし、この自由には代償が伴う。アップルは、この新法に従うことが、ユーザーのプライバシーやデータセキュリティを危険にさらす可能性があると警告している。

Apple Intelligenceが欧州で提供されない理由

iPhone 16シリーズの最大の特徴の一つは、Apple Intelligenceと呼ばれるAI機能である。この機能は、ユーザーの利用状況に合わせてカスタマイズされる高度なAIツール群であり、特にA18チップセットと8GBのRAMを搭載したプロモデルでその威力を発揮する。しかし、欧州市場向けのiPhone 16では、このApple Intelligenceが提供されないことが決定している。

その理由は、デジタル市場法(DMA)にある。この法律は、企業が自社のサービスを優遇することを防ぐため、第三者とデータを共有することを義務付けている。アップルは、この要件がApple Intelligenceの提供に影響を与えると判断し、欧州市場ではこの機能を制限することを決めた。これにより、欧州のユーザーはより自由なカスタマイズが可能になる一方で、最新のAI機能を利用できないというトレードオフが生じることとなる。

ユーザーはロックダウンと自由、どちらを選ぶか

iPhone 16の二極化戦略は、ユーザーに大きな選択を迫ることになる。アップルの最新技術をフルに享受するために、制約の多い北米モデルを選ぶべきか、それともカスタマイズの自由がある欧州モデルを選ぶべきか。どちらの選択も一長一短があり、ユーザーがどちらを優先するかによって、その体験は大きく異なる。

北米モデルは、Apple Intelligenceをはじめとする最新のAI機能をすぐに利用できる点で優れている。一方、欧州モデルは、アップルがこれまで拒んできた自由なカスタマイズが可能であり、ユーザーが自身の好みに合わせたiPhoneを作り上げることができる。しかし、これらの自由は、AI機能の欠如という代償を伴う。最終的に、どちらの選択がユーザーにとって最適かは、その個々のニーズや価値観に大きく依存することになるだろう。