Appleが初めて自社開発したC1 5Gモデムを搭載する「iPhone 16e」が、Snapdragon X71モデムを採用する「iPhone 16 Pro Max」との比較テストで予想外の結果を見せた。YouTuberのDave2Dが行ったスピードテストでは、iPhone 16eが200Mbps超えの速度を記録し、iPhone 16 Pro Maxの153Mbpsを上回る場面もあった。

C1モデムはmmWave非対応である点が批判されていたが、実際の使用環境では十分な性能を発揮する可能性がある。ただし、今回のテストは通信環境が良好な都市部で行われたため、電波状況が異なる場所では結果が変わる可能性もある。Apple初の自社モデムが、今後どのような評価を受けるのか注目が集まる。

iPhone 16eのC1 5Gモデムは本当に遅いのか 実際のスピードテスト結果

iPhone 16eに搭載されたApple独自開発のC1 5Gモデムは、発表当初から「廉価版の性能」「Qualcomm製より劣る」といった批判を受けていた。特に、従来のiPhoneシリーズに搭載されていたSnapdragon X65やX70と異なり、mmWave(ミリ波)に非対応である点がネックとされていた。しかし、実際のスピードテストでは意外な結果が得られている。

YouTuberのDave2Dが実施した比較では、C1モデムを搭載するiPhone 16eと、Snapdragon X71モデムを搭載するiPhone 16 Pro Maxの通信速度を計測。Ooklaのスピードテストを使用したところ、iPhone 16 Pro Maxのダウンロード速度は最大153Mbpsだったのに対し、iPhone 16eは200Mbps超えの記録を達成した。

これにより、一部では「低コスト化のために性能を落とした」との見方が疑問視される結果となった。ただし、このスピードテストはカナダのトロントで実施されており、通信環境の整った都市部での計測結果である点には注意が必要だ。

エリアによっては異なる結果となる可能性があり、特に電波状況が悪い地方や屋内環境での性能は引き続き検証が求められる。それでも、C1モデムが「廉価版=低性能」という単純な構図ではないことが証明されたのは間違いない。

mmWave非対応は本当に問題なのか 実際の利用シーンを考察

C1モデムがmmWave(ミリ波)をサポートしていないことが懸念点として挙げられているが、実際の使用環境においてどの程度影響があるのかは議論の余地がある。AppleがmmWaveを省いた背景には、単なるコスト削減だけでなく、技術的な選択が関係していると考えられる。

まず、mmWaveは超高速通信を実現する技術ではあるものの、その普及率は限定的だ。日本や米国の一部都市では導入されているが、対応エリアは依然として狭く、実際にmmWaveを活用できる場面は限られている。また、障害物に弱く、屋内や地下ではほぼ機能しないという特性もあり、多くのユーザーにとってmmWave非対応の影響は小さいと考えられる。

一方で、5Gの主流であるSub-6帯域にはしっかり対応しており、一般的な利用では高速かつ安定した通信が期待できる。特に、都市部においては5G基地局の密度が高まっており、mmWaveがなくても十分な通信速度が確保されている。

この点を考慮すると、AppleがiPhone 16eにmmWaveを搭載しなかったのは合理的な判断とも言える。結局のところ、mmWaveの有無が影響を及ぼすのは特定のケースに限られ、多くのユーザーにとってはほとんど違いを感じることはないかもしれない。

C1モデムがもたらすバッテリー持ちの向上

iPhone 16eのC1モデムには、従来のQualcomm製モデムと比較してもう一つ大きなメリットがある。それはバッテリー持ちの向上だ。AppleはiPhone 16eにより大きなバッテリーを搭載しただけでなく、C1モデム自体が省電力設計になっている可能性が高い。

バッテリー容量はiPhone 16と比較して約11%増加しており、これに加えてC1モデムの最適化が電力消費の抑制に貢献していると考えられる。特に、モデムはスマートフォンの中でも消費電力が大きいコンポーネントの一つであり、効率的な設計によってバッテリー持ちに大きく影響を与える。

mmWave非対応も消費電力の低減に寄与している可能性があり、実際の使用時間が延びることが期待される。これにより、iPhone 16eは長時間の利用にも耐えうるスマートフォンとして位置付けられる。

特に動画視聴やオンラインゲームなど、高負荷の通信を必要とするシチュエーションでは恩恵が大きいと考えられる。性能面ではSnapdragon X71と比較されることが多いC1モデムだが、バッテリーの持続時間という点では、むしろ優れた選択肢となる可能性もある。

Source:HotHardware