Appleは次世代CarPlayの開発に注力しているが、その裏で既存のCarPlay 1.0ユーザーへの対応が軽視されている現状が浮き彫りになった。次世代CarPlayは2022年に発表されたが、未だに市場での実装が進んでおらず、既存モデルに対する改善も見られない。
現行CarPlayに新機能を追加し、カスタマイズ性やHomeKit統合、EV向け機能を強化する余地があるにも関わらず、Appleはそれを怠っている。こうした状況は、すでに数百万台の車で使用されているCarPlayユーザーに不満を与えていると指摘される。
Appleが進める次世代CarPlayの開発とその課題
Appleは次世代CarPlayの開発において、自動車メーカーとの連携が鍵となる大規模プロジェクトに注力している。発表から2年以上が経過したが、市場への具体的な展開は未だ実現しておらず、複数のメーカーと協力中であるとされる。その中でTesla、GM、Rivianなどの主要メーカーが未対応である点も課題として浮上している。
次世代CarPlayは、従来のミラーリング機能を超え、ダッシュボード全体を統合する高度なシステムを目指している。これにより、車両情報や運転支援機能との密接な連携が可能になるとされる。しかし、この目標を達成するためにはメーカーごとに異なるシステムと統合する必要があり、技術的・契約的なハードルが高い。こうした状況はAppleの市場戦略の中で一貫した「エコシステム強化」の一環であるが、スピード感の欠如がユーザー体験に影響を与えていると考えられる。
Appleは新技術の推進力として知られるが、現状の進展の遅れは競合他社や市場動向において不利に働く可能性がある。
現行CarPlayの改善が見過ごされる現実
Appleは次世代技術に注力する一方で、現在も数百万人が利用しているCarPlay 1.0に対する改善を怠っているとの指摘がある。現行CarPlayはiPhoneのミラーリングを基本とした優れた機能を持つが、アプリの追加やカスタマイズ性の向上といったユーザー体験を進化させる取り組みが見られない。
例えば、Appleが次世代CarPlayで示唆した「天気アプリの統合」は、既存モデルにも十分実装可能な内容である。また、壁紙の選択肢拡大やインターフェースのレイアウト変更など、比較的容易に実現できる改善策もあるとされる。しかしAppleはこれらを実行せず、「すべてを変える」次世代モデルにのみ焦点を当てている。この方針は、新機能を待つ既存ユーザーの不満を助長する可能性がある。
現在のCarPlayが抱えるもう一つの課題は、技術革新が進む一方で、既存のユーザー基盤を軽視している印象を与えている点である。この状況は、Appleがこれまで築いてきた「ユーザー体験の重視」というブランド価値に逆行しているとの見方もある。
EV市場への対応で問われるAppleの柔軟性
電気自動車(EV)の普及が進む中で、Apple MapsのEVルーティング機能は高く評価されているが、その対応車種がFord Mustang Mach-E、F-150 Lightning、Porsche Taycanに限られている点は課題である。この機能は車両のリアルタイムなバッテリー情報を必要とするため、メーカーとの協力が欠かせない。
一方で、Appleが既存の制約を克服し、CarPlayにEV向け機能をさらに拡充する余地は十分にある。例えば、バッテリー残量に依存せず、充電ステーションの位置や利用可能状況、予測充電時間などを提供する機能は独自に実装可能である。こうした機能は特に新興市場や中堅メーカーのEVモデルにも対応しやすく、AppleがEVユーザーの支持を拡大するための鍵となり得る。
EV市場の急速な成長に対応するためには、Appleが柔軟な戦略を取ることが求められる。既存の制限を超え、より多くのユーザーに価値を提供できる環境を構築することが、競争力の維持につながるだろう。
Source:9to5Mac