2024年第3四半期の専用GPU出荷台数は、前四半期比14.5%減少した。Jon Peddie Researchによれば、この落ち込みは例年見られる売上増加傾向を大きく覆す異例の事態である。主因は、NVIDIAやAMDの次世代製品発表が控え、消費者が購入を控えていることにある。
ディスクリートGPUの出荷台数は前年同期比でも減少し、最新技術への期待が市場全体の購買行動に大きな影響を与えている。特にNVIDIAは市場シェアをさらに拡大し90%を占めたが、次世代製品の到来を前に全体の成長率は鈍化が予測されている。この状況は今後の市場動向にも波及する可能性が高い。
ディスクリートGPU市場の低迷とNVIDIAの市場支配力
2024年第3四半期のディスクリートGPU市場では、出荷台数が810万台にとどまり、前年同期比および前四半期比で大幅な減少を記録した。Jon Peddie Researchによると、通常成長が期待される時期にこのような低迷が起きた背景には、消費者がNVIDIAやAMDの次世代製品を待ち、購入を控えたことが挙げられる。
この市場でのNVIDIAのシェアは、88%から90%へと2ポイント上昇し、圧倒的な存在感を示している。一方、AMDはシェアを10%に縮小され、Intelに至っては実質的な影響を持たない状況が続いている。
こうした中で、NVIDIAの市場支配力は強まっているが、新製品の遅れや消費者心理の慎重さが全体の成長にブレーキをかけている。価格が上昇傾向にある中で、統合型グラフィックスの性能が進化し、専用GPUの購入に対する魅力が薄れている点も影響していると考えられる。この状況は、技術的進化だけでなく、価格戦略や市場全体の需給バランスに新たな課題をもたらしている。
CPUとGPUの市場構造変化が示す課題
デスクトップCPUとディスクリートGPUの出荷比率は、2024年第3四半期で2010万台対810万台となり、いずれも減少傾向にある。前年同期比で見ると、CPUは1900万台から増加したものの、GPUは900万台から減少した。統合型グラフィックスが進化を遂げる中で、専用GPUの市場縮小が鮮明になっている。
この変化は、特にコスト意識の高い消費者層において、価格と性能のバランスを重視した選択が増えていることを示唆している。
さらに、2024年以降もGPU市場は年間平均成長率-6.0%と厳しい見通しが立てられている。Jon Peddie Researchは、この背景として米国における関税問題や消費者支出の停滞を指摘している。今後、製品性能の向上や価格競争力を維持できなければ、特に中低価格帯の市場で統合型グラフィックスにシェアを奪われるリスクがある。
次世代製品の登場が市場回復の鍵
次世代GPU製品は2025年1月に発表されると予測されており、市場の注目を集めている。NVIDIAやAMDの新シリーズは、高性能な演算能力や新しいアーキテクチャを特徴としており、これまで購入を控えていた消費者が再び市場に戻る契機となる可能性が高い。これらの製品が性能面で革命的な進化を遂げた場合、2024年第3四半期に見られたような低迷が一時的なものである可能性もある。
ただし、価格設定や供給能力が鍵を握る点も見逃せない。特に、次世代製品が高価格帯に集中すれば、消費者層が限定されるリスクがある。Jon Peddie氏も述べているように、経済環境の変化が消費者心理に与える影響は無視できない。
市場が次世代製品に求めるのは単なる技術進化ではなく、手頃な価格で高い付加価値を提供することにある。このバランスをいかに実現するかが、GPU市場の未来を大きく左右するであろう。